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239号 百聞は一見に如かず

-2008/10/01-

今回は昭和43(1968)年4月に初めて欧州に視察旅行に行った時の話をしよう。北回りでヨーロッパへ約27日間の旅だった。当時は、欧米へ旅すると聞 くと人々が目を輝かせ、憧れたものである。知人なり、取引先の方たちまでが、厚みのある餞別を下さり、なかには駅頭まで、親戚に至っては空港までにぎにぎ しく見送りに来てくれるような時代である。


初に印象深いのは、敗戦国ということで日本と同じ立場にあったドイツのベルリン市内が、東西に分断されている状況をこの目で確かめたことだった。鉄 の壁の途中にある東西ベルリンの通行門である厳重な検問所でパスポートを預けさせられ、バスの床下へ鏡を入れて検査され、門の通路は「く」の字に曲がって いてまっすぐは走れないようにしてある。日本の菊のご紋章の入った元大使館の建物など主要な建物とおぼしきものは、東ベルリンに多くみられ、ソ連兵が歩い ているのがやたら目についた。東の共産国側は暗くて不景気な感じだったのに対して、西ベルリンは活気に溢れ、街も明るく物資も豊富な感じだった。分断の壁 の所々に望桜があり、24時間中ソ連兵が機銃を構えていた。また、ベルリン上空を飛んでいる時、窓にカメラを近づけファインダーを覗いていたら、めくじら 立てたスチュワーデスにこっぴどく叱られた。秘密主義に徹した共産圏の冷戦時代当時の厳しい緊張感がひしひしと身にしみた。


平和の国スイスの山々と、広々と点在する牧場の緑は、うららかな牧歌的な風景とともに忘れられない美しさであった。スイスには何度でも行ってみたいと思って いる。欧州の文化の発達はわが国とは比べものにならない。特に社会資本の充実という点では日本とは全くかけ離れている。例えば、ローマなどでは、何世紀も 前に整備したという下水道が、その当時のまま現存使用されているし、道路には煉瓦状の石が整然と敷詰められており、その上を車に乗ってゴトゴト走る感覚を 大切に体に覚えておくようガイドさんに言われたものだ。またどんな辺鄙なところへ行っても日本のようにブッシュというか灌木・雑草が雑然と茂っているとこ ろはなく、どこもキレイに手入れされており、青々とした芝生がジュウタンを敷きつめたように美しい。


どこ の教会も重厚な建物で、その荘重さにも圧倒された。ステンドグラスを通して漏れ出る美しい色彩は神秘的に輝き、敬虔な祈りを捧げる気分を誘う。日本の寺社 仏閣は街はずれにあるが、欧州では協会が中心となって街を発展させてきたようにうかがえた。それに、広場とか街角には時代を感じさせる彫刻が配され、その 中には見事な噴水があり、ビルの家々には要所にやはり見事な彫刻が掲げられており、民家の窓辺には必ず花の鉢が、また、街と山、野原と川と建物との織りな す美しい風景は、まさに何千年の歴史がはぐくんだ長い文化の伝統を誇るヨーロッパを象徴しているように思えるのである。今一つ、郊外を走っていると緑の牧 草地の彼方に美しい山が聳え立ち、その頂上付近には必ず言って良いほど古城が建っている。その厳然として威容はヨーロッパならではの風景である。


現 在は、昔と違って気軽に海外に行ける時代になった。経営者の子息には海外に留学経験を持つ者も少なくない。地球はどんどん小さくなり、経済活動もグローバ ルで考えないといけない時代となって久しい。しかし、これから先の新しい時代がどのような枠組み、仕組みで動くのかまだわからないが、しっかりと足元を固 め、自分の目で見て感じて触れたものを大切にしてほしい。


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