アリの社会

WRITERめっき課 香西健一

アリの社会が卵を産む女王アリと女王や幼虫の世話をし、食料をあつめる働きアリとに分業されていているのはよく知られている。が、この働きアリ、巣の中をよく観察していると、全体の2割くらいは仕事をせずにサボっているそうである。そしてこの2割のサボリアリを取り除くと、今までちゃんと働いていたはずの残りのアリのうち2割が、またサボリ出して、結局群れの中の働きアリは常に2割が働いていない状態になるというのである。

アリの生態を研究している人たちはこのようなアリの振る舞いを、アリの社会では、社会に余裕を持たせるために、常に2割くらいのアリが休むようにしているのではないか、と説明している。そして、人間社会もそのように余裕を持った社会にしなければ長続きしないよ、と説く。


 

ところで、シロアリという昆虫がいる。アリと名が付いてはいるが、アリがハチの仲間なのに対しシロアリはゴキブリの仲間で種としてはあまり関係は深くない。このシロアリだが、アリと同じようにシロアリにも兵隊アリがいる。しかしシロアリの兵隊アリは巣を守るために戦ったりはしない。つまり、アリのサボリアリと同じく働かないのである。

ところがこのシロアリの兵隊アリ、ふだんは巣の中でよく見かけるのに、食料が少なくなった時にはほとんどいなくなる。そして巣の片隅には、兵隊アリのアゴや脚の残骸が散らばっているそうである。つまり、シロアリ社会では、いつもは働かない兵隊アリはタンパク質貯蔵庫として機能していて、食料が少なくなった時には他のシロアリに食べられてしまうのである。群れを維持するためとはいえ、恐ろしい習慣に進化したものである。

さて、今の人間社会は、アリ型なのかシロアリ型なのか、いったいどちらなのであろうか。

めっき課 香西健一(第71号:2007年9月)


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